「どこでも高度医療」実現のための超臨場感コミュニケーション
・遠隔触覚協働環境における柔軟物変形の同期制御に関する研究
 近年,医療現場において,患者への負担が軽く,日常生活への早期復帰が可能であることから,低侵襲手術が注目を集めている.しかしながら, 低侵襲手術は高度な技術と熟練を要するため,若手医師教育目的の手術シミュレータの需要が非常に高まっている. 低侵襲手術は複数人が協働で行う手術であるが,従来の低侵襲手術シミュレータは一人で訓練を行うスタンドアロン型のシミュレータであるため, 複数人による協働での作業訓練が出来ない.そこで本研究では,遠隔地間にいる複数ユーザが,仮想空間上の柔軟物体を操作し,多人数による遠隔協働作業訓練が可能な ネットワーク型の低侵襲手術シミュレータの研究開発を行っている.


・物理ベース・オンラインリメッシュ型・変形/剥離/穿刺/切断シミュレーションに関する研究
  仮想柔軟物体に対する力覚インタラクションの研究は,バーチャルリアリティ(VR)において重要な研究のうちの1つである.このようなシミュレーションは,手術シミュレーションやインターネットショッピングなど様々な分野への応用が期待される.安定的な提示のためには,柔軟物体の場合は数百Hz~500Hz程度(力覚的実時間)で反力を更新する必要があり,変形計算を効率的に行うための手法が必要とされる.そこで本研究では,必要に応じて動的にメッシュ解像度を変更するオンラインリメッシュおよびGPUによる大規模並列計算を適用することで,軟組織のリアルタイム変形/剥離/穿刺/切断シミュレーションを実現する.


・臓器の異形バリエーションに対応した手術シミュレータの研究開発
 腹腔鏡下胆嚢摘出術では胆管異常走行(異形)がしばしば見られ,手術リスクの一因となっている.異形は術前のCT,MRIによる撮影で事前に検知されることが多いが,実際の術野映像から異形を認識し迅速に手術をすすめることは難しい.こうした特殊症例に対する訓練が行えることは,VR技術を用いたシミュレータの利点の1つである.特に,医学生に対する初期教育で異型を含めた解剖知識と手術手技を目と手で学べる教材として,シミュレータがより有効な手段となると考えられる.
 著書らが開発している腹腔鏡シミュレータでは,術野空間を構成する対象器官をモジュール化することで,異常走行などの複数の特殊症例を表現できる構造を採用した.このモジュール化された器官モデルの機構は他の器官での異型を表現する場合にも適用できる.


・腹腔鏡下手術手技システムのVR訓練システムに関する研究
 近年、医療の高度化に伴い,内視鏡下での低侵襲手術が注目されている.この手術手法は,従来手法の開腹手術とは異なり,モニタを見ながら,力触覚の乏しい鉗子を用いて行われる.そのため,内視鏡手術では高度な技能が要求され,医師は技術の習熟が必要である.また,医学生の学習内容の増加に対応するために,効率的に訓練できる環境が求められる.そこで本研究では,訓練者に対してあたかも教師が手をそえているような教示が可能なシステムの実現を目指している.さらに,力覚だけでなく,視覚も含めたマルチモーダルな情報を提示し,訓練者が直感的に理解できる方法を考えている.





・手術手技モデリングに関する研究
 内視鏡外科手術などの専門的な作業においては,熟練者による手指を用いた精密な作業(手技)が重要な役割を果たす.本研究では,内視鏡外科手術における熟練者の手技をアーカイブし,手術プロセスに基づいてモデリングすることで,学習者が任意の手術プロセスにおける熟練者の手技を学習することが可能な手技訓練支援システムの実現を目標とする.本提案では,内視鏡手術シミュレータを用いた作業を対象に,1)学習者・熟練者の手技とシミュレータ内部の視覚・力覚データを観測・アーカイブするシステムの構築,2)観測データとシミュレータ内部データを統合した,手術プロセスに基づく手技モデル作成,3) 学習者に対して熟練者の手技を視覚的・力覚的に提示する手法の確立,により目標の達成を目指す.
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